閉検定手順(closed testing procedure)

多重比較と言えばTukeyという世界で育った私にとって,会社に入って聞く「閉手順」とはいったい何ぞや?と思ってました。インターネットレベル(日本語)だとうまいこと分からなかったので,最終手段である「統計的多重比較法の基礎@永田&吉田著」を購入して調べることにしました。

統計的多重比較法の基礎

統計的多重比較法の基礎

閉検定手順とは,

Q⊃Pとなるすべての仮説H_QおよびH_Pがそれぞれ比較あたりの有意水準αで棄却されるときにのみH_Pを棄却するという条件

で各仮説を検定する方法(当該文献参照)とありました。簡単に言えば,ある帰無仮説を棄却するのは,それを誘導する帰無仮説を棄却できた場合のみという方法です。3群の母平均μ1,μ2,μ3を例に考えます。帰無仮説μ1=μ2は,帰無仮説μ1=μ2=μ3より誘導されます。よって,閉検定手順では,帰無仮説μ1=μ2=μ3が棄却された場合のみ帰無仮説μ1=μ2を棄却できるという条件のもとでμ1=μ2の検定を行います。
なんとなく想像できましたでしょうか?出来なかったら素直に上記の本を買うことをオススメします。
で,問題は何かと言いますと,そういう手順で検定を行えば,全体の第一種の過誤の確率(type I familywise error rate; type I FWE)は有意水準αに抑えられるという証明。先ほどの誘導される帰無仮説をH_P(添え字はi),誘導元の帰無仮説をH_Qと考えると,以下の式が成り立ちます(当該文献参照)。

タイプ1FWE=Pr(少なくとも1つのH_Piを棄却|H_Qが正しい)
     ≦Pr(H_Qを棄却|H_Qが正しい)
     ≦α

この2式目がさっぱり分からない(分からなかった)。2式目の方が確率が減るならまだしも,増えるなんて!!とずーーーーーーーーっと考えてました(多重性を考えたりしました)。で,さっきようやく分かりました。キーワードは閉検定手順だったのです。前述したあの条件の下では,2式目が成り立つのです。H_Piを棄却するのは,H_Qを棄却したとき。H_Q棄却を条件とした条件付確率を考えれば,確かに成り立つのです。すげぇよ,閉検定手順。そして多重比較。